2017年9月30日

都市に響くワルくてセクシーなブラック・ミュージック ~ILL BRO​$​E By ILLSUGI + FITZ AMBRO$E~


ヒップホップのビートメイカーが作る野蛮なマシン・ファンク、もしくは骨格だけでできたフューチャー・ソウル? ズシンズシンと鳴るリズムと、コンクリートの壁をえぐりそうなほどの硬さと重さを感じさせるベースが低音域を支え、その上に乗っかる電子音とヴォイス・サンプルの響きは妙になまめかしい……。

日本人ビートメイカーのイルスギと、カナダ出身で現在は日本に住むビートメイカーであるフィッツ・アンブローズが、ここで展開するのはそんな音楽です。いたる所で聴こえてくるセクシーな音が、深夜の都会を思わせる、ワルい雰囲気の中で鳴るからなのか、よりセクシーさを際立たせているように感じます。

ヒップホップからはワルさを、ソウルやファンクからはセクシーさを引き継ぎ、そしてできあがった、ほんの少しの甘さを含んだワイルドな香り……。この香りが体にまとわりつくように漂っています。



2017年9月26日

心地よい光の渦の中へと誘う、これはエレクトロニカか、オーガニックなバレアリックか? ~7717 By KETA RA~


反復するギターは小鳥のかわいらしいさえずりのように、そしてやらわかく弾むリズムは草原を駆ける草食動物の足音のように……、そんな風に響く音たちで構成された音楽。聴いていると、春の陽光に包まれたかのごとき心地よさを覚えます。

日本人クリエイターのケタ・ラがサウンドクラウドにアップしていた曲。カテゴライズするのであれば、エレクトロニカ、ニュー・エイジ、ポスト・クラシカル……といったあたりでしょうか。オーガニックなバレアリックとも言える?

シンプルなフレーズを反復するギターとリズムだけで、こんなに心地よい曲が作れるのですね。心地よくて眠りに落ちそうです。



2017年9月24日

キュートに迫るビート・ミュージック/ブレイクビーツ ~mycatisflying By Mycatisflying~


タイトルを直訳すると、わたしの猫は飛んでいる……、はて、どういう意味なのでしょうか。意味などないのでしょうか。もしかして、英語のことわざとか。……と思いつつ、アーティスト名を見てみたら、タイトルと同じではないですか。これはどういうことかな。

作っている音楽はシューゲイザーを少し加えたビート・ミュージック、あるいはブレイクビーツといった感じ。そんな曲が並ぶ作品の中で5曲目にポコッと置かれたエレクトロニク・ポップ……! フューチャー・ソウルのテイストが混じった、この曲のキュートさに心をくすぐられました。

猫のイラストを使ったジャケットのキュートさに、5曲目のキュートさが合っているように感じます。この作品を象徴する曲が5曲目であると言ってもよさそう。そしてこの路線の曲をもう少し聴いてみたい!



2017年9月22日

ビートは甘くなまめかしく揺れる ~TROPICAL [ WHITE ] By GREEN ASSASSIN DOLLAR~


これが日本のアンダーグラウンド・ヒップホップの香りでしょうか。深い……、実に深い……、アンダーグラウンドの世界へと聴き手を誘う、日本人ビートメイカー、グリーン・アサシン・ダラーによる音源です。

ソウルやR&Bから甘くなまめかしい部分を抽出し、それをアメリカ西海岸のアンダーグラウンド・ヒップホップに注ぎ込んだような音楽を展開しています。妖しげな空気を濃厚に漂わせ、音はなまめかしく揺れる……、酔いそうなほどに揺れる……。



2017年9月21日

泥臭いファンクをあなたに ~Funk 45 Set at Temple Bar, Santa Monica. 04.23.03 By Egon~


泥臭いファンクが好きな人たちに、やっぱりファンクは泥臭くないとなと思っている人たちに届けたいDJミックス。ロサンゼルスのヒップホップ・レーベルである、ストーンズ・スロウ傘下のナウ・アゲインを主宰するイーゴンが、バーでDJをしたときの模様を録音した音源です。

内容は泥臭いディープ・ファンクが中心。バーでDJをしたときの音源ということが関係しているのか、やたらダンサブルというほどでもない、お酒を飲んでゆるりと酔った時に合う、楽し気なテンションが続いていきます。7インチのレコードのみを使っているらしく、レコードらしいバサバサとした音のあたたかみも感じられます。

※イーゴンのプロフィールはこちら



2017年9月20日

アナザー・サイド・オブ・マッドヴィレイニー ~Illest Villains - The Madvillain Mixtape - Vinyl Mix By BeatPete~


いつも素晴らしい内容のDJミックスをアップしているドイツのヒップホップDJ、ビートピートが今回ターゲットにしたのは、アンダーグラウンド・ヒップホップ名作選みたいな特集があると、かなりの頻度で取り上げられる『マッドヴィレイニー』。そしてそのリミックス・ヴァージョンを収めた『マッドヴィレイニー2』。

ビートピートがこの2作品の収録曲と元ネタと思われる曲を使って制作したDJミックスをサウンドクラウドにアップしていました。この人らしい凝った構成になっているのはもちろんのこと、様々な方向にコロコロと転がるように展開させ、さすがはビートピートと随所で思わせます。

それぞれの曲に元々あるネジれたというか、ぶっ飛んだというか、そんなユニークさはそのままに、奇妙な楽しさ……を漂わせる、イビツで愉快なコラージュ作品と言える内容に仕上げています。

『マッドヴィレイニー』も曲の間に切れ目のない、DJミックスみたいな作りの作品なので、これはDJミックスとして聴くより、新たな解釈のもの……、『マッドヴィレイニー3』みたいな作品として聴いてみてはいかがでしょうか。



2017年9月17日

温もりのあるビートとラップに乗って、あたたかい我が家に帰ろう ~Home By Illa J~


伝説の……と言われるほどの存在であるビートメイカー、J・ディラの弟であり、ラッパーとして活動するイラ・Jの通算3作目。タイトルは『ホーム』。このタイトルにしたのは、この作品には我が家のようなあたたかさがある、あるいは家族同士の思いやりの心みたいなものを込めた……、からではないかと、そんなことを思いました。

この作品にあるのはそんなあたたかさ。丸っこいビートとほっこりとした質感のウワモノのサウンドが基調になっていて、ヒップホップにカテゴライズされる作品でありながらも、イカツさは皆無。ネオ・ソウルに通じる温もりが全編を覆っています。

そしてイラ・Jはあたかみのあるトラックに軽やかに乗ってたゆたうように、ラップと歌を行き来します。夕暮れ時、我が家に帰る道すがら聴こえてくる歌声のように聴こえなくもない? あたたかい音に彩られたこのヒップホップは、これからの秋の季節に合いそうです。





2017年9月16日

このインストゥルメンタル・ヒップホップ/ブレイクビーツは美しく、優雅に…… ~L a g o o n By Mujo情~


ビートはゆったりと優雅に、ウワモノのサウンドは美しく……。どこか美しいところがある、どこか優雅なところがある、ジャズのテイストを織り込んだインストゥルメンタル・ヒップホップ/ブレイクビーツが並んでいます。

作者はハンガリーのMujo情と名乗るビートメイカー。この作品にある美の感覚はヨーロッパの人ならではの感性によるものなのでしょうか。ヨーロッパの古い映画のサウンドトラックとして使われていそうであり、ヨーロッパの古く美しい街並みを想起させるようでもある、そんな音楽です。

そしてそういった感覚を生んでいるのは、これって、1920年代、1930年代、1940年代のジャズ?というほどに何だか古めかしく響くジャジーなフレーズ。古い時代の美しいジャズの旋律が聴こえてきます。この美しさ、優雅さに……、とりあえず浸っていましょう。



2017年9月13日

今日のベストの1曲 日本のヒップホップ編 ~テキトーILL By GREEN ASSASSIN DOLLAR Feat.MOMENT.~


日本人ビートメイカー、グリーン・アサシン・ダラーのプロデュースによる曲。このビートメイカーが作るインストゥルメンタルの曲が素晴らしいことはよく知っております。そしてラップが入ったこの曲……、これも素晴らしいよ!

冒頭で聴こえてくる、甘口のソウルやR&Bから拝借したような、なまめかしく響くキーボードの音からしてもう最高ではないですか。ラッパーの声のヤサぐれ具合もいい感じで、トラックはやや甘く、ラップはやや辛く……、甘さと辛さのいいブレンド。



2017年9月11日

そよ風のようにやさしく響く自然派エレクトロニカ ~Laby+ By KETA RA~


みんな、自然に帰ろう。山へ、川へ、野原へ……、みんな、帰るんだ。このキュートでファニーなエレクトロニカはそう呼びかけている……、かもしれません。これは言うなれば、自然派エレクトロニカ?

作者はケタ・ラ(KETA RA)と名乗る日本人ギタリスト。この作品は空想のゲーム音楽として作成したというだけあって、ピコピコと鳴る、確かに昔のゲームで使われていたような記憶がある電子音が主体になっています。

しかしそれでいてオーガニックな感触もあるのがこの作品の大きな特徴です。ピコピコと鳴る電子音と交錯する、つま弾いたアコースティック・ギターの音がオーガニックな質感を加えています。

5曲目「Morahnge Fountain」、8曲目「Beating!」で感じる、森の中を、もしくは草の上を吹き抜ける、そよ風を思わせる音……。この音がこの作品の特徴をもっとも分かりやすく表現しています。そしてこの音の気持ちよさといったら!



2017年9月8日

日本の北から届いた流麗なヒップホップ ~HJ7 Blends #28 By DJ Maruyama~


このスムースなノリ、いや、グルーヴって言うのかな? やっぱりこういうヒップホップも必要でしょう! やわらかく弾むタフでファットなリズム、艶っぽく流麗に流れるウワモノのメロディ……。それらが交錯し、生まれるスムースなグルーヴが気持ちよく、心地よく感じられます。

北海道で活動するDJ、DJ MaruyamaによるDJミックスはそんな仕上がり。ア・トライブ・コールド・クエストやブラック・シープなどの1990年代のもの、ジョーイ・バッドアスやフレディ・ヨアキムといった最近のもの、そしてヨータローやブダモンクといった最近のアンダーグラウンドのものまで使っています。Flofilzも!

洗練されたアーバンな雰囲気とヒップホップらしいワイルドさが混じり合い、女子も男子も揺らす、また、心地よくチルアウトさせもする……。家でまったりと聴くのがよさそうです。それでは酔いましょうか……。



Tracklist:

Suite For Ma Dukes – Find A Way
A Tribe Called Quest – Find A Way
Janet Jackson – Got ’Til It’s Gone (Feat. Q-Tip)
Flofilz – Dulce
Black Sheep – Without A Doubt
Freddie Joachim – L&H
Joey Bada$$ – Super Predator (Feat. Style P)
Rob-O – Mention Me (Inst)
Cockroacheee’z – Poor Brain (Chronic Ver.)
J-Dilla – Jay Dee 42
Yotaro – Sword
Budamunk & Masta Ace & DJ Hart – Cool
Coops – Lonely
Tek & Figub – We Are Hip Hop (Feat. Noritsu)
IO – Cheek My Ledge (Feat. Yushi)
Elaquent – The Look (Tou Know What Love Is)
Sraw & East – Round
DJ Mitsu The Beats – Park Walk
J. Rawls – Far Away (Feat. Apani B.Fly & Mr. Complex)
Fat Jon – Isolation
Chuva Chuva – Cry

2017年9月4日

今宵は甘くメロウなブレイクビーツに酔いしれようではありませんか ~hibernature By invention_~


スカしたクールなリズムと、リリカルかつメロウな甘い旋律を奏でるピアノが、おたがいにまどろむようにしながら、ゆったりと重なりあう……。そのさまにうっとりとして……、まったりとして……、穏やかな気持ちになる……。甘い眠気に包まれる感覚を覚えます。

ヒップホップとジャズ、そしてフューチャー・ソウルの共演。ジャジーでソウルフルな癒しの……? いや、たそがれの……? この作品からはそんなインストゥルメンタル・ヒップホップ/ブレイクビーツが聴こえてきます。ヌジャベスの音楽をスローにしたら、こんな感じの音楽になりそう。

作者はinvention_と表記するカナダのビートメイカー。インベンションと読むものと思われます。むせかえるほどに甘く、過去の楽しかった思い出を思い出させるほどにノスタルジックな音の渦に飲み込まれ、心は眠りと目覚めの境界へ……。

今日はブルーマンデーと呼ばれる月曜日。ものの見事にブルーなマンデーとなった人たちは、これを聴いて甘く心地よい世界へトリップしましょう。ブルーなマンデーとならなかった人たちも。



2017年9月2日

地下の世界から聴こえてくるインストゥルメンタル・ヒップホップ ~Whispered Beat tape By ill.sugi~


相も変わらず、深い……、音が……。これは湿った地下の深~いところから聴こえてくるインストゥルメンタル・ヒップホップ。日本人ビートメイカー、イルスギの作品です。とびきりローファイ、とびきりスモーキーな音にはアンダーグラウンドの香りが濃厚にまとわりついています。

という具合にこれまでのイルスギの作品とほぼ同じテイストの作品です。地面を這って進むドラム、荒っぽい質感の図太いベース、モクモクとした煙りに包まれたキーボードや電子音……。ジャズやソウルのテイストを含んだそれらの楽器が重なり合った音は妖しく、なまめかしく響いています。



2017年9月1日

マルチ・インストゥルメンタリストを超えた、マルチ・インストゥルメンタリストによるエレクトロニック・ジャズ ~Little Nerves By BINKBEATS feat. Niels Broos~


自分で演奏した楽器の音をリアルタイムで重ねていくことにより、ひとつの曲にしてしまう、この人のことを何と呼べばいいのでしょうか。マルチ・インストゥルメンタリスト? いや、でも……、それは違うような……。

そのマルチ・インストゥルメンタリスト、それはオランダ出身のビンクビーツなる人物です。数年前からユーチューブにアップしている映像では、自分で演奏した楽器の音を録音し、その録音した音を流して、その間に別の楽器を演奏するという、何ともマカフシギなことをしていました。

そんなビンクビーツが2017年10月13日にデビューEPをリリースするらしく、ユーチューブにそのEPに収録する予定の曲「リトル・ナーヴス」をアップしていました。ドラムンベース風のリズムを下敷きにした、エレクトロニック・ミュージックと交錯したジャズ、もしくはダウンテンポといった趣の曲に仕上げています。

ベースを弾きながらドラムを叩いたり、キーボードだか、サンプラーだかをいじくったり、他にも何やら……。もう一人何役なんだか……。とりあえず映像を見てみてください。

そしてこの曲で共演しているキーボード奏者のニルス・ブロースはフライング・ロータス周辺のジャズ系のアーティストとつながりがあるようです。ビンクビーツとニルス・ブロースを追っていくと、さらにおもしろい音楽に出会えるかもしれません。